内田 治 著:「すぐわかるSPSSによるアンケートの調査・集計・解析」より

第1節 アンケート調査の手順

アンケート調査は、計画→準備と実施→集計と分析(解析)→報告と活用という順番で進められる。

どの段階も重要であるが、なかでも計画をしっかり立てておかないと、アンケートを実施しても、良いデータは集まらない。良いデータが集まらないと、どんな統計処理をして分析も良い結果は得られず、調査結果を活用できない。

1.計画

 計画を立てる際は、次の項目のことを明確にする。

1)調査目的

 何のために調査するのか? 結果をどのように活用していくのか?

 アンケート調査は仮説検証型と現状把握型の2つのタイプに分けることができる。

 ・仮説検証型
  調査を実施するものが何らかの仮説を設定しその仮説が本当に成立するかをデータで確認することを目的とする。
  →どんな仮説を検証しようとしているのかを明確にする。
   仮説の設定には、グループインタビューを行うとよい。調査対象者から少人数を選び、意見交換の中から、仮説を発見する。

 ・現状把握型
  調査をすることにより、どんな状況で何が起きているのかを把握し、その結果を意志決定に活用することを目的とする。
  →アンケート結果をどのように活用するのかを明確にする。

2)調査項目

 何を知りたいのか?何を調べるのか?

 アンケートの質問文はこの調査項目をもとに考えていくことになる。

3)調査対象

 誰に質問するのか?

調査の対象となる集団のことを母集団という。たとえば、ダイエットに対して日本の女子大生がどのように考えているかを調べようとすると、日本中の女子大生が母集団となる。アンケートをする場合、母集団の全数を調査するならば、全数調査といい、母集団の一部を抜き取って調査するならば、標本調査という。

4)調査規模

 何人に質問するのか?

 標本調査ならば、母集団から選び出す人数を決めなければならない。この人数は、要求精度、回収率、予算を考慮して決定される。

 ・要求精度
  標本調査は一部のデータから母集団を推定していくので、標本と母集団の間には調査結果に誤差がともなう。
  この誤差を最大でどの程度まで許せるかというのが要求精度。これは統計学に無関係に調査担当者が任意に決める
  要求精度が決まれば、統計学を利用した計算によって何人選べばよいか自動的に決まってくる。

 ・回収率
  要求精度に基づいた統計計算によって調査人数を50人と選び出しても、回収率を50%と予想したら、100人必要になる。
  回収率は過去のアンケートを参考に予想 → 通常は20〜70%の間

 ・予算

  予算は最後に考えること。しかし、調査人数が決まっても、調査票を郵送する場合は、予算に調査人数も影響される。

5)調査時期

 いつ実施するのか?

 実施する時期によって回答は大きく異なる。質問内容に応じたタイミングで実施する。
 例:就職意識のアンケートを4月に行う場合と、12月に行う場合。

6)調査方法

 どのように調査するのか?

 アンケートでデータを集めるには、いろいろな方法がある。次に代表的な調査方法を紹介する。

 ・訪問面接法
  調査対象者を訪問して、インタビュー形式で行う方法。
  回答者に直接会えるので、回収率が高く、誤回答も少なくデータの信頼性が高い。
  調査員たちに事前教育をして、統一した説明ができるようにする手間がかかる。
  調査員たちに支払う費用がかかる。

 ・郵送調査法
  調査票を対象者に郵送し、対象者に記入後返送してもらう方法。
  人手がいらないし、費用が少なくて済む。
  回収率が低い。

 ・留置調査法
  対象者に調査票を配布し、数日後に調査員が回収してまわる方法。
  回答するのに時間を要するアンケートの時に有効。

 ・街頭調査法
  調査員が街頭で対象者を見つけて、インタビュー形式で質問に答えてもらう方法。
  インタビューに応じてくれる人に出会うのが難しい。回答に偏りが生じやすい。

 ・電話調査法
  対象者に電話で質問し、答えてもらう方法。
  質問の数を少なくして、相手に時間を取らせないようにする。
  回答してくれる人に出会うのが難しい。

 ・集合調査法
  対象者をある会場に集めて、その場で質問に答えてもらう方法。
  一度に多数の調査票を回収できる。
  会場確保や集合時間と場所の連絡といった事前準備に人手がいる。

 ・電子メールやインターネットの利用
  電子メールやホームページで質問し、電子メールで回答してもらったり、ホームページに書き込んでもらったりする方法。
  回答結果をパソコンで入力する手間が大幅に軽減できる。
  ホームページを見た人だけが回答することになり、回答結果に偏りが生じたり、母集団を推定しにくくなったりする。

7)予算

 どんな方法によってアンケートをするかで、予算を決める。
 とくにアンケートの回答に対し、謝礼をするのかどうかで予算は違ってくる。

2.集計と分析

 どのように集計し、どんな統計処理を使って分析するのか?

 アンケートで収集したデータをどのように集計し、どんな統計処理を使うかは、事前に計画しておいた方がよい。

 ・集計

  単純集計・・各選択肢に何人が選んでいるかを質問毎に集計。
  クロス集計・・2つの質問を組み合わせて集計。2つの質問間にどんな関係があるかを分析していくことができる。
         データチェックにも使う。

単純集計はすべての質問について行うが、クロス集計は関わりがある質問を組み合わせて行う。そこで、どの質問とどの質問を組み合わせてクロス集計するか、次のようなマトリックス図で整理すると良い。

 

性 別

職 業

第1問

第2問

性 別

 

 

職 業

 

 

第1問

 

 

 

第2問

 

 

 

 

 ・統計処理

  第3章以下を参照のこと

第2節 調査票の作成

 アンケートを行うに際し、調査票の質問文や回答項目が回答者にとってわかりやすいものでなければならない。

1)質問文

 質問文は次のチェックポイントに気を付けて作成する。

 ・失礼な語句を使っていないか?

 ・難しい表現はないか?

 ・あいまいな表現はないか?
  →きちんと朝食をとりますか、とりませんか。

 ・まぎらわしい表現になっていないか?
  →健康診断は病気予防に役立たないと、思いますか、思いませんか。

 ・1つの質問に2つ以上の論点を含んでいないか?
  →当ホテルの宿泊施設フロントの対応は良いですか、悪いですか。

 ・個人的質問と一般的質問を混同していないか?
  →社内のスポーツ大会を開催することに、賛成ですか、反対ですか。

 ・特定の価値観を含んだ言葉はないか?(誘導質問に陥っていないか?)
  →報道機関に対する政府の言論統制は、必要ですか、不要ですか。

 ・平等に扱っているか?
  →勤務中の禁煙活動に賛成ですか

 ・質問文の順番に問題はないか?
  →簡単に答えられる質問から難しい質問へと並べる。似たような話題の質問は連続するように並べる。

2)回答項目

 回答項目には自由回答、選択回答、順位回答の3つの形式がある。
 その回答形式に応じて、得られた回答データの性質が規定される。→第3章へ

 ・自由回答

  自由回答には、数量を答えてもらう場合と、語句や文章で答えてもらう場合がある。
  ア:あなたの年齢は(  )歳
  イ:あなたの好きな色は(  )色
  ウ:ダイエットについての考え方を教えてください。(                      )

アの質問で答えた年齢(数量)はそのまま統計処理できる。
イの質問で答えた色(語句)は、コード化してから統計処理をする。→1.赤 2.青 3.白 ・・・
ウの質問で答えた考え方(文章)は、文章を要約してからコード化したり、文章内のキーワードをコード化してから統計処理をする。
 →1.美容のため 2.健康のため 3.美容と健康のため ・・・ 
  または、
  1.美容 2.健康 3.理由なし ・・・

 ・選択回答

  選択回答には、単一回答と複数回答の2種類ある。

  単一回答・・回答項目(選択肢)の中から1つだけ選ぶ。
        2つの中から1つを選ぶ二項選択と、3つ以上の中から一つ選ぶ多項選択がある。

  複数選択・・回答項目(選択肢)の中から2つ以上選ぶ。
        いくつでも選べる無制限複数回答と、選択する数に制限を付ける制限付き複数回答がある。

  注1)回答項目の内容が統一されているかチェックする必要がある。
     →ダイエットをする苦しみに対して、
     1.苦しい 2.我慢できる程度の苦しみ 3.苦しい時と苦しくないがある 4.苦しくない

  注2)すべての回答項目を出し尽くしているかチェックする必要がある。
     しかし、すべて出し尽くしているか判定するのが難しい場合がある。→回答項目の最後に「その他」を設ける。

  注3)多項選択の場合、回答項目の語句に修飾語を付けて順序関係を付ける場合がある。
     例:1.満足 2.やや満足 3.やや不満 4.不満
     この場合、次のことに注意する。
     1.修飾語に、「非常に」、「十分に」、「まったく」などの強い修飾語を用いない。
       これらの修飾語がある回答項目は選ばれにくい傾向がある。
     2.何段階に分けるかという問題が発生するが、一般には4・5・7段階がよく用いられる。
       5と7段階では、「どちらともいえない」という中間に位置する回答項目が設定できる
       ただし、「どちらともいえない」に回答が集まりやすくなる
     3.修飾語による格付けでは、例に示したようなリッカート法と、イメージを問うような質問で形容詞を使うSD法がある。
       <リッカート
        飾ってある絵は「暖かい」イメージを
         1    2       3        4     5
        受ける やや受ける どちらともいえない あまり受けない 受けない
       <SD
        飾ってある絵のイメージは
            たいへん やや どちらともいえない やや たいへん
        暖かい  1    2    3       4  5    冷たい
                                      

 ・順位回答

  順位回答には、完全順位付けと部分順位付けの2種類ある。

  完全順位付け・・すべての回答項目(選択肢)に順位を付ける。

  部分順位付け・・上位3つまでというように部分的に順位を付ける。